私のジブリ・ノート

私が初めてジブリ作品を見たのは2010年。最初の2週間で宮崎作品を全て見た。何かが爆発した

2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『火垂るの墓』を見た。(その2)「意地悪な親戚のおばさん」は本当に意地悪か。

(その1)からの続きです。 この映画は兄と妹の生と死を描いているわけだけど、この少年はすごく独りよがりな部分がある。親戚の家に厄介になっていて、母が死んだと知れるとごくつぶしのみなしごの面倒を見ているというふうに露骨に態度が変わり、結局はそ…

『火垂るの墓』を見た。(その1)この作品は、苦しんで見るべき作品だと思った。

2012年の9月になるが、高畑勲作品『火垂るの墓』を見た。 先ずはっきり書いておきたいのは、この映画は凄いと思う、ということ。一生に一本撮れたら幸せだと思えるような作品だと思うし、今まで見た(というか途中まで見てどの作品も最後まで見ることを放棄…

『ハウルの動く城』を見た。ソフィーの心の変化に応じて、物語が伸び縮みしているように思った。

一言で言うと、普通にいいファンタジー映画だった、と思った。 Wikipediaをみると、原作とはかなり変えてあるところがあるらしいのだが、宮崎らしい仕上がりに成っているのではないか。 若いソフィーが魔法で急に年を取らされて老人の苦しみを知り、また逆に…

宮崎駿が『風立ちぬ』で描こうとしたもの(2)

(その1)からの続きです。 こうした匂いを感じさせるのは、たとえば白洲正子がそうだった。彼女は旧華族家の跳ね返りでどうじたばたしても生きているという実感をつかめずに、親を驚かせる結婚をしたり、女性で初めて能舞台に立ったり、自分が本当に生き切…

宮崎駿が『風立ちぬ』で描こうとしたもの(1)

『風立ちぬ』についていろいろ書きたい、という感じがすごくあるのだが、しかしながら書く材料が不足している、という感じもある。また、まだ公開間もなく見ていない人が多い段階で書くべきでないということもかなりあるし、この意見は納得できないという多…

宮崎駿監督『風立ちぬ』を見た。

宮崎駿監督作品『風立ちぬ』を見た。 『風立ちぬ』を見たのは、公開されて1週間ほどたった平日の朝9時からの回。まだ地元では夏休みになってなかったので、子どもたちもおらず、私が一番若いくらいの年齢構成の客層だった。 以下、そのときの感想。 これは…

宮崎駿『本へのとびら 岩波少年文庫を語る』を読んだ。:「子どもに向かって絶望を説くな」というぶれのなさを感じた。

宮崎駿『本へのとびら 岩波少年文庫を語る』(岩波新書、2011)。これは宮崎が岩波少年文庫の50冊を上げて、それについての紹介が前半で、後半がそれについて論じるところと、子どもに向けてどんな作品を作ればいいか、どんな作品を読んでもらいたいか、とい…

鈴木敏夫『映画道楽』

スタジオジブリの鈴木プロデューサーの新刊、鈴木敏夫『映画道楽』(角川文庫、2012)を買った。これは2005年にぴあから発売されていたものの文庫化だとのこと。読みやすいし、いろいろと面白い。鈴木氏の本はどれも面白いので出てるとすぐ買ってしまうのだ…

『もののけ姫』再考:(その5)「子どもたちの冷えた心の闇」への通路と「表現としてのアニメーション」

(その4)からの続きです。 「サンとアシタカは、実は私たちのまわりにいるたくさんの子どもたちの中で精一杯生きているのです。ですから大人たちには分からなかったけど、アシタカがサンに「生きろ」と言った時に、「生きよう」と心に決めた子どもたちがず…

『もののけ姫」再考:(その4)生きるということの大変さは、生きるということそのものの中にある

15世紀、すなわち戦国時代に日本の歴史の転換点があったということは日本史学上いわれていることだが、宮崎はその転換を「産業的な飛躍」ととらえ、そのために「経済成長と同時にひどく無思想な、理想のない行動をたくさんするようになった」のだという。 す…

『もののけ姫』再考:(その3)サンとアシタカの持つ「病のオーラ」と、「なぜサンはアシタカを癒そうとしたのか」

(その2)からの続きです。 それではそうした絶望をこの作中で体現しているキャラクターは誰かと言えば、そんなことは言わなくてもわかると言われるかもしれないが、私はそれがはじめて「サン」であることを認識した。つまり私は「サン」というキャラクター…

【『もののけ姫』再考:(その2)「生きろ。」というコピーの背後の深い絶望】

【『もののけ姫』再考:(その2)「生きろ。」というコピーの背後の深い絶望】 (その1)からの続きです。 私はいろいろな物語を書きたいと思っている。しかし日本の過去の歴史を舞台にした物語を書きたいと思ったことがなくて、そういう意味でも『ものの…

『もののけ姫』再考:(その1)正当に評価されにくい宮崎作品

【『もののけ姫』再考:(その1)正当に評価されにくい宮崎作品 】 『もののけ姫』はジブリ映画で私が最初に見たものなのだけど、最初だけによくわからなくて、イヤにイメージの像の結びにくい複雑な映画だなと思った覚えがある。そういえば借りたDVDが…

『最後の国民作家 宮崎駿』と「宮崎アニメの描く過渡的・奇形的な自然」

3年前、2011年の今頃のことになるが、酒井信『最後の国民作家 宮崎駿』(文春新書)を読んだ。この本は、私に宮崎作品を考える上での、また宮崎の発言を考える上での一つの枠組を提供してくれたなと思う。 今までジブリコーナーなどで立ち読みした『ユリイ…

【「かぐや姫の物語』をめぐる高畑監督と爆笑問題太田の対談は、表現の永遠の課題:作り手としてやりたいように表現するのか、誰にでも分かりやすく表現するのかについての話だった。】

スタジオジブリの広報誌『熱風』が届いた。今回いろいろ考えさせられたのが『かぐや姫の物語』を見た「爆笑問題」の太田光と、高畑勲監督との対談。『かぐや姫の物語』は線で囲って色で塗り籠める「普通の」アニメに対し、ラフな線が動き、すべてを塗り尽く…

養老孟司・宮崎駿『虫眼とアニ眼』は、宮崎駿の危機感の本質が表明された対談だった。

大変面白い対談だった。 たとえば、「人のせいにするのは都会の人間の特徴」だということ。どういうことかというと、田舎に暮らしていると自然の力でどうしようもないことはいくらでもあって、誰のせいでもなく仕方ない、となるのが、都会だと何か不都合が起…

『紅の豚』は『風立ちぬ』につながる、死者を追慕しつつ生きることを選択する、宮崎監督の大人のアニメだった。

『紅の豚』を見た。観終わった第一印象は、宮崎監督にしては珍しい「普通の映画」という感じ。リアリティというか、ヨーロッパ映画的な手触りの上にファンタジー性を盛っている。そのせいなのか、見終わった後の「印象」はかなり強い。波止場に止めた船、あ…