鈴木敏夫『ジブリの哲学』を読んだ。頭の中に1000の作品を持つこと。
この本を読んだのは2011年のこと。文化の日だった。
ユニバーサルミュージック社長の石坂敬一と鈴木敏夫との対談で、石坂は「音楽産業に従事する人はレパートリーとアーチストに精通していないといけない。頭の中に1000曲持っていろ」ということを言っていた。
これはすごく感心した。あたりまえと言えば当たり前のことだけど。
佐村河内守氏の問題でいろいろと言われていたとき、新垣隆氏は佐村河内氏のリクエストに応える形で、自分の持っているレパートリーの中から知っているものを駆使してそういう曲を書いた、というようなことを言っていた。クラシックの作曲家というのはそういうものかと驚いたのだけど、それはクラシックだけでなく、ポピュラーミュージックに従事する人でも同じことなのだ。
それはほかのジャンルでも同じことだろう。
アニメを作る人はアニメーションが1000本頭の中になければいけない。絵を描く人は、頭の中に1000枚の絵がなければならないということだろうし、小説を書く人は頭の中に1000本の小説がなければならないということなんだろう。
最近書けないなあ、と思ってどうしたらいいのか、とにかく書こうと思って書いてもあまりよいのが書けない、という状態が続いていたのだが、つまりはレパートリーが少ないのだと言われてみればなるほどと腑に落ちる。一体今までどんな小説を読んできたのか、ちゃんと1000冊上がるかどうか、並べてみようと思ったし、まずはとにかく読むということを再開しないといけないなと思った。
本当に自分の納得のいくアイデアがちゃんと出て来るまで、まずは自分の頭の中を立て直さないといけないと思った。
石坂は、日本の歌手がいけないのは、外国ものとかライバルの作品をきかないで、似たような歌しか作れなくなることだ、という指摘をしていて、全くその通りだなと思う。アイデア出しは常にやっていかないといけないが、それだけでなくとにかくまず読むこと、読むことによってインスパイヤされることから始まるという指摘は、その通りだと思った。
GNPやGDPに対してGNCという概念が『Foreign Policy』に出ていたという話も面白かった。
Gross National Cool。国民総カッコよさ。実にしびれる。
先進国はかっこよくなくちゃいけない、というのは全くその通りだなと思った。
「Foreign Policy」の中で、そのGNCポテンシャリティーのNo.1は日本だったという。
それはイチローのデビューの年の話だそうで、今はどうかなと思うけど、そういう考え方って相変わらずビビッドだと言えるんじゃないかなと思った。